闇夜を貫く気高き誇り
ストーリー
相棒はどうした?
たいした弓の腕だったな。
しかし、これで終わりだ。
男は剣を高々と掲げると、
ダージに向かって振り下ろした。
―それが最後の一体だった。
―男が振り返ると、
山を埋め尽くしていたはずの
魔物が一匹も残っていない!
貴様の軍団を、最後尾の者から
仕留めていっただけだ。
音もなく、一匹一匹、な……!
というわけでもない。
たった一人の弓使いに、
そんなことが出来るわけが……
万の軍勢も
タダのマトだって事だな。
鮮やかすぎて
ムカつきもしねえ。
じゃア、ありませんよォ~♪
残念、こちらが一枚上手で~す♪
本当の作戦はァ―
いくらでも召喚は―
いまのうちなの!
レイヴンが空を指す。
そこには、闇に溶けるような
黒色の飛行艇が、
いつの間にか現れていた!
ルエルの周囲に
夜よりも濃い<闇>が渦を巻く!
混ざりし<闇>よ……
この場に千億の同胞を―
<闇>を吸っている……?
<白色の狗>……!
クソがァ……!
―レイヴンの放った矢が、
ルエルの心臓を―
ジェガルの一矢が額を!
それぞれ貫いた!
―少女―ルエルは、
三人がその場を去ると―
二人の矢に貫かれたまま、
ニヤァリと嗤う―!
もう壊れンですっテば―♪
…………
……
おめーまで来る必要は
なかったんだよ。
あたしがいなかったら
ジョニーはここに来れなかったの!
伝言があります。
俺は依頼をこなすだけだ。
俺の、祖国の―
―Fin―
一糸乱れず、
進んじゃっテくださ~イ♪
たとえ敵の矢に倒れテも―
永劫の安息を
約束するデショウ♪
ルエル様の、おおせのままに……!
将らしき男の号令に、
無数の魔物たちが吠え声をあげる。
替わりはいくらでも
いますしネェ~♪
闇に溶け、気配を消して
忍び寄るのだ……
ゴーレム!
もはや隠密行動は不要!
魔物の大軍が、
砦を目指して進む……
皆、魔物の化けた姿か……!
人間に混ぜることも出来るらしい。
めんどくせー仕事を
受けちまったもんだぜ……
仕事はまだ終わっていない。
苦情言ってくんだよ。
聞いてたよりも
しんどいじゃねーかってな。
せめて、安らかに眠れ……!
…………
……
ちと、状況が―
―ああ、そうだ。
手回しは早ぇな、畜生。
…………
……
雑魚どもがッ!
闇夜から降ってきた一本の矢が、
寸分違わず
魔物の眉間を刺し貫いた!
―そしてそこへ、音もなく、
甲冑を着けた男が舞い降りる―
黒翼の。
何度か、共に仕事をしたな。
光栄じゃねぇか。
…………
おびただしい数の魔物の軍勢が、
ジェガルたちのたてこもる
砦を目指して進軍している。
一気に揉みつぶせ―
月もない闇の中、この距離を
どうやって―
降り注ぐ矢の雨。
しかしそれは確実に―
―虚空を裂き、魔物たちに
次々と突き立っていく―!
なァ~にを手間どって
いるんですかァ……?
―朽ち果てた砦の中。
小さなロウソクを灯し、
少女が佇んでいる―
この島のことを。
シマツスルノダカラナッ!
魔物の姿へと変貌した
数人の兵士が、
少女に飛びかかる。
馬鹿どもの相手はよ。
肩を払いながら、
冷徹な眼差しの男が呟く。
―と。
その言葉を受け、
少女がゆらりと顔を上げた。
ちとムカつくぜ。
なんでまた人間の真似を?
便利だっただけだ。
……毒だ。
見事な手前だったぜ。
数百年前も前に流行した病だ。
造作もない。
<光死病>なんざ、
ウソッパチってわけだ。
つけてくれたもんだぜ。
ための情報統制だろう。
……そう信じこませ……
ためだろうな……!
ムカつくぜ、畜生……!
切り離された箱庭―
交流を封じれば管理は容易い。
その島には毒がない。
そのじいさんは、
もう助からない……。
少女は小さな器に液体を注ぐと、
老人の背をさすりながら、
それを口に含ませた……
ほんの数回呼吸するうちに、
老人の肌に
生気が戻ってくる―
いまあんた、何をした……?
闇夜の使いか……!?
どこからか現れた
少女のもたらす「薬」は、
病に苦しむ人々を
たちどころに癒やした。
―だから―
もっと強くなれるんだね―
器を掲げた少年の手を、
少女は驚くほど機敏な動きで
止めた。
そのままそっと、
少年の手から器を受け取る。
少女は静かに首を振ると、
くるりときびすを返して
その場から遠ざかっていく……
ある島は独立を保ち、
またある島は、大きな勢力に属す。
―その島は、連邦の領域からも、
帝国の領域からも―
―人の領域からも外れ―
―<奴ら>に屈している―
どうした、大丈夫か!?
屈みこんだ老人の呼吸は浅く、
顔色も死体のように白い―
家、家はどこだ!?
それとも、医者を―
ずいぶん安全なところに
いたとみえる。
お前、このじいさんの
症状がわかるのか!?
<光>という甘い誘惑が、
人の心身を侵してしまう……
じいさん、あんた、
光に惹かれちまったってのか……
その様子ではもう手遅れだな。
目の前に苦しんでいる
人間がいるっていうのに、
見捨てようってのか!
あきらめるな!
いますぐ医者に……!
ホラ、じいさん、俺の背中に―